大宜味村喜如嘉の山奥に、大川ペークという村人がよく薪(をとるために利用する山があったそうです。しかしそこには喜如嘉に人たちにとって、たいへん怖いところでもありました。実はその山は、歌うガイコツの声が聞こえてくるところだったのです。
昔、喜如嘉のきこりがその山奥へ入って木を切っていると、女の声で歌が聞こえてきました。そのきこりは、「村の娘が薪を取りながらうたっているのかな」と思い、気にせずに仕事を続けていました。しかしその女の声は同じ歌を何べんも繰り返してうたっているだけでした。
不思議に思ったきこりは、まわりを見渡して、どうもここからそんな遠いところで歌っているわけではないなと気づきました。きこりは聞こえてくる歌をたよりに、女の声のするところをさがすことにしました。すると、その声は、前方から聞こえたかと思えば、そばから聞こえたり、はたまた後ろからも聞こえてきます。
「おかしいな、いったいどうなっているんだ」と、不審(に思っていると、数メートル後ろの木にガイコツがかかっているのを見つけました。近づいてそのガイコツをよく見ると、鼻穴(から小さい枝が出ています。きこりは仰天(し、思わず手を合わせて地にひれ伏(しました。
四方から歌が聞こえたのは、ガイコツの歌が風にのって伝わるからでした。ガイコツは、こんな風に歌っていました。
東風(ぬ吹きば御(かじんやむい
三日水(ふしやや 飲(みんならぬ
「東風(が吹けば、自分の頭も痛み出し、三日水(死に水)を飲みたいと思っているけど、飲むことも出来ない」という意味です。
きこりは、ほうほうのていで自宅に帰り、家族や村人にその日の恐ろしい体験を話しました。そのガイコツは、薪を取りに山に入り行方不明になってしまった喜如嘉の女の人であるらしい。きっとハブにかまれて死んだその女性が、シラクチ(白骨)になって、無念(の思いを歌で訴えていたのであろう・・・。 |