9月4日夕方から、沖縄本島を暴風圏に巻き込み、まともに上陸した台風16号は、午後10時頃から未明の3時頃まで台風の目に入れ、(最大風速57m、雨量が400mm余)未明からの返し風は一段と強く、県内全域で大きな被害をもたらした台風であった。翌日の昼過ぎ、風は幾分収まったが、雨は一段と強くなった。夕刻、小用で外出した時の出来事!
国道329号線を沖縄市知花十字路から石川向け走行中、北美小学校を過ぎた所で、交通渋滞が目に入ってきた。それは上下線ともである。その場所は、小さな河川を横断し、道路の構造上最も水の溜まりやすい箇所である。折からの豪雨に冠水しての交通渋滞だと悟った。
ドライバーは、道路中央部の水位の低い所を選んで走行していた。路面水が縁石を超え、歩道までもが水路と化していた。その先には、電気系統のトラブルと思われる車が、立ち往生していた。私は現場の状況からして排水溝が、うまく機能をしてないと考え、車を降り排水溝を探した。草や木の葉等で塞がれ、機能不全になっていた。
直ちに素手でつかみ除去をしてみたところ比較的楽にとれた。すると溜まった水は勢い良く流れたので次々に除去していった。三個所目の排水溝を除去中、降りしきる雨の中を前方の歩道上から、小走りで駈け寄ってきた人が目に入った。私はトラブルを起こしたドライバーが、助けを求めてきたものだと思った。次の瞬間その人は、はっきりした口調で「他にも排水溝はありますか?」と声をかけてきたのである。
驚きと我が耳を疑いながらも残りの排水溝の場所を教えると、その人は即座にその場所を見つけ手際良く作業をしていった。20〜30分後周りの排水溝をきれいにし終えたところ、見事なまでの水はけの良さにお互いの顔を見合わせ喜んだ。ずぶぬれになりながらも作業を終えた安堵感と満足感の中、ねぎらいの言葉を掛けたところ、なんと今まで若い男の子だとばかり思っていたその人は、二十代の若い女性(仮名:Hさん)であった。それにはさすがの私もびっくりした。
嵐の中、急ぎでお互いの紹介を終え、雨に追われ車に乗り込んだ。車中私は近年に無い心地よさと、他人事に無関心な人の多い昨今、心温まる出来事に感動し家路に着いた。停電中の我が家で、家族にその出来事を話せずにはいられなかった。
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平成14年9月10日
仲宗根
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予想以上に強く吹き荒れた台風16号に、当店も二日間休業となりました。翌日は開店と共にお客様は、被害の状況や、停電時のエピソード等、一段と話題が多い日でしたが、昼時お越しになった常連のお客様の、台風時の出来事の話しに、私は身を乗り出して聞き入りました。
思わず「えっ、今時そのような子が?」秩序の薄れた若者が目立つ昨今、このようなすばらしい出来事を耳にして、胸が,熱くなり感動致しました。このような善意あるお話に心が躍り、早々に南部国道事務所に一報入れましたところ、所長もこの出来事に感激され、所長と共に彼女の職場を訪ねました。初対面の彼女の笑顔と勇気ある行動に改めて感激し、頭が下がる思いをしました。
私もHさんと同じ年頃の娘、息子がおりますが、このようなすばらしい善意ある話を肥やしにして、少しでも(Hさんに)近づけるよう願う所です。
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平成14年9月10日
武原
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