その昔、現在の渡久地港から伊野波(まで入江で、船の停泊地(として賑(わっていたといいます。「石くびり」とよばれる道は、村落の東にある小高い丘にあって、山間の並里(へ通じています。その鬱蒼(とした小道はいにしえのロマンスを伝える琉球古典舞踊の歌の舞台として、とみに有名です。
伊野波の石こびれ( 無蔵つれてのぼる(
にやへも(石こびれ( 遠さは(あらな
歌の意味は「伊野波の石ころ道の坂は、たいへん難儀(な道だけども、愛する人をつれて上がるときには、もっともっと長く続く道であってほしい」という、熱い内容の恋歌です。
「石こびれ(石くびり)」は石ころ道の坂の意味、「にやへも」はもっと、「あらな」はあってほしいという意味です。
ある言い伝えでは、伊野波に生まれた男性と山向こうの集落に生まれた女性は、お互いに相思(の仲でした。夜になると二人は共に伊野波部落に泊まって愛を語らい、つぎの朝早くには女を送るために、二人は石くびりまでやってきました。
鬱蒼としたその小道は、幅も三尺(足らずの坂道で、奥へ行けばいくほど小石まじりの急な坂です。人目を気にしないでいられる格好(の場所なので、二人は互いに熱い思いを語り合いながら歩いてやってきます。
しかし石くびりをすぎると、村人の目も気にしなければならず、やがて別れなければなりません。こんな険(しい道でもっともっと長く遠く続いてればいいのに・・・。
そんな若い二人の恋する気持ちと別れの切なさを、見事に詠(んだのが「伊野波節」なのです。古典音楽の中でも珍しい「本調子(」の独唱(の節歌で、その歌唱(は大変高度な技を要求されます。舞踊も「諸屯(節」と並んで、もっとも難しい女踊りとされています。
伊野波部落の小高い丘の鬱蒼とした茂みの小さな坂道は、現在も昔の面影をとどめています。その入口から約50メートルほどのところには「伊野波節」の歌碑(が立っていて、古典的なロマンスを今に伝えています。 |