| 漢那・惣慶(の両むらのまつりごとを伺っていた漢那ヌール(神につかえる神女・祝女)は、たいへんな美人で、近隣でもその噂は高かったそうです。
あるとき、漢那ヌールの兄は「村を離れてあまりにも長い。いったいどうなっているのか」と妹のことを心配していました。
そんなある日、家の側を歩いていたムヤークーヤー(物乞(い)が、「漢那ヌールは、あんなに美しい人だから、首里の侍・川平真山戸とよく似合いだなあ」とひとりごとを言いました。それを聞いた兄はかんかんに怒り、「こんなに帰りが遅いのは、きっと男でもできて、遊んでいるのだろう」と早合点してしまいました。
首里の川平真山戸なる人物は、のちに「漢那節」(トーシンどーい)でうたわれるほどの色男でした。兄はムヌークーヤーのことばが妙に気になって仕方がありません。
兄は毎日、漢那の松崎原(漢那ビーチ南西方面)へ行っては、帰りを待っていました。ある日、ようやく妹のヌールは馬に乗って帰ってきました。すると兄は妹の事情も聞かずに、いきなり馬から引きずり降ろすと、なんと恐ろしいことになぐり殺してしまったのです。
その後、こと切れた妹の亡がらを浜辺へ引きずっていき、漢那のマチグ上り(漢那小学校の東方)にまつったそうです。
そんなむごいことがあって以来、むら人たちは「あんまり美人に生まれてはいけないよ。漢那の人はちょうど中ほどが一番いいよ」と言い合うようになったそうです。
不思議(なことに、話の舞台となった漢那では「漢那ヌール」の類話はたくさん伝承(されています。若いヌールが他の男と話しているのを聞いた兄が妹を殺したり、妹のヌールが拝みに行って帰りが遅かったので、兄と弟の2人で妹を殺したという話。
また、兄に殺された美人の若いヌールは、死ぬ前に「美人に生まれてはいけないよ。人なみに生まれ、代々栄えなさい」といった話も伝わっています。 |