兼箇段は具志川の西側にある高台の、その名の通り段上になっている集落です。その昔、その兼箇所に「兼箇段クミルン小」という、美しい女の人がいたそうです。
地面に届くほど黒髪(で性格は、真夜中でも一人で家を出て行くという怖いもの知らずの男勝りでもありました。
その兼箇段クミルン小が、東恩納(番所に勤めていた男の人とつきあい始めました。毎晩、家を出ては東恩納の男の人の所へ通っていました。
途中、兼箇段ウテーという、両脇(が高い丘になっていて、昼間でも暗くて星が見えるほどの、道幅の大変狭い難所(がありましたが、兼箇段クミルン小は平気でした。またジョーミャーバカ(門が三つある墓)という気味の悪い場所もあり、そこにはマジムンが出るという噂(もありました。
男の元に通っている事を知ったクミルン小の兄は、「これはどうにかしないといけない」と思い、獅子(の面(をかぶって驚かしてミルクン小を止めようと計画しました。
クミルン小は、ハブに噛まれないようにスルガー(シュロの繊維()をふくろはぎに巻いて、夜出かけました。
ウテーで待ち伏せしていた兄は、村から借りてきた獅子を被(って、獅子のあごをカクカクさせて、通りかっかたクミルン小を驚かしました。
ところがクミルン小は少しも怖(じ気(づく様子もなく、落ち着いてこう言いました。
「驚くなよ、獅子。おまえもきっと思うことがあって、そこに化けて出てきたのだろう。私も思いがあって、東恩納へ行くのだよ。お互いにじゃまをしないで、そこを通らせておくれ。そこにそのまま座っていなよ」
そして、獅子の頭をぽんぽんと撫(でると、そのまま夜の道を一人すたすたと歩いていったそうです。
これにはさすがの兄もびっくりして、「これじゃ誰もクミルン小を止めることはできないな」とあきらめたそうです。 |